In the East

僕が九段下にある日本武道館の名前を知ったのはいつの事なのだろうか。全く憶えちゃいないけど、多分そこで行われたライヴイベントを通してその名前を知ったのは間違いないだろう。もしかすると1966年のThe Beatles唯一の日本公演の会場としてその存在を知ったのかもしれない。小学生の時にTVでその模様を見た記憶があるので(勿論再放送だが)、その時が最初だろうか。

武道館は実は海外でも有名なライヴ会場だ。何故ならそこで録音された数々のアルバムが存在するからで、今思いつくままに挙げてもこれだけある。勿論他にもいろいろある訳だが。特にCheap TrickDeep Purpleは彼らのキャリアを通じての代表作が下記のライヴだったりするので、彼ら自身にとっても武道館は特別な場所だろう。

Made In Japan: 25th Anniversary Edition

Made In Japan: 25th Anniversary Edition

チープ・トリック at 武道館コンプリート

チープ・トリック at 武道館コンプリート

武道館

武道館

ジャスト・ワン・ナイト?エリック・クラプトン・ライヴ・アット武道館

ジャスト・ワン・ナイト?エリック・クラプトン・ライヴ・アット武道館

ライヴ・アット・武道館

ライヴ・アット・武道館

QUEENの79年のライヴ盤「Live Killers」も録音こそヨーロッパツアー中に行われているが、ジャケットに使われている写真は79年の武道館公演で撮影されたもので、撮影自体も日本人カメラマンの長谷部宏氏によるものだ。

ライヴ・キラーズ

ライヴ・キラーズ


武道館に足を運んだ人ならば判る事なのだが、実はアリーナ席でライブを見ているとそれ程会場の器として大きさを感じる事は無い。実際アリーナはスペース的に大きくは無い事がその理由なのだが、スタンド席から見た場合、その印象は大きく異なる。座席がすり鉢の様に立体的にレイアウトされているので、それこそ古代のコロシアムに紛れ込んだような錯覚をもよおすのだ。実際アリーナ、スタンドを合わせると1万人のオーディエンスを収容可能な会場なので、1万人と対峙するアーティスト側からしてみればそこは勿論大会場であり、そこに立つという心境はさながらコロシアムに集った群集を前にした戦士みたいなものだろう。

僕自身が武道館で見たライヴもそういえば特別な瞬間だったんだな、と思える物がいくつかある。91年のOzzy Osbourneは引退ライヴだったし(その直後に引退撤回した時はずっこけたが。まあ好きだから撤回は嬉しかったけど。)、93年のBon Joviはこじれにこじれまくった人間関係を清算した後の復活ライヴ、同じ年のDef Leppardは中心メンバーだった故スティーヴ・クラークの弔い合戦の様相を呈していた。バンドの人気=集客率、と言える訳で、人気があれば当然会場は大きくなる。前記のバンドにしても世界的な人気を誇る連中だからして、武道館ライヴになんら不足は無いのだが、やはりライヴの場所を選定するにあたって「特別な瞬間に特別な場所で」という想いも少なからずあるであろう事は想像に難くない。実際、今でもこれらのライヴは僕にとって良い思い出の1ページだしね。

で、僕の最も愛するバンドの一つ、Judas Priestも先週武道館でライヴDVDのレコーディングを行った。

http://www.roadrun.com/blabbermouth.net/news.aspx?mode=Article&newsitemID=37074

メタルを代表する伝説のバンドの復活ツアーを武道館でレコーディング、というシチュエーションはこれ以上無いほどインパクト大だし、今回は足を運べなかった僕もこれは是非とも見てみたいと思わずにはいられない。海外の連中にしたってこれは同じ想いだろう。そのDVDのタイトルはPriestの70年代の名ライブ盤「Unleashed in the East(訳すならば「日本で大爆発」とかそんな感じか。そう、このアルバムも武道館では無いが、ここ日本でレコーディングされている)」のタイトルを引っ掛けて「Re-Unleashed in the East(日本でまたまた大爆発。うわ、訳すとかっこ悪い)」だそうな。早く見てみたいね。

Unleashed in the East

Unleashed in the East




:追記
実は武道館をライヴ会場として初めて使ったのはThe Beatlesだったりする。当時のヒステリックな現象そのものとも言えるThe Beatlesという存在を受け入れるに足りる会場は、当時日本最大でありながらもライヴに使った事など無い武道館以外存在しなかったからだ。「そんな鬼畜米英の若造に使わせてなるものか!」と当時右翼の街宣車が出動したり、政治家が「品位の面から反対!」と大騒ぎになったらしい。でも首都高を完全に閉鎖してホテルまで送迎、とかまるで国賓並みの扱いを彼らは受けたのだから、やはりそれに見合った会場は必要だったのだろう。

80年代の中頃まで、武道館のステージに最多登場した記録を持つアーティストはDeep Purple〜Rainbowのギタリスト、Ritchie Blackmoreだったりもするのだが(日本人・外人すべて含めての話なのでこれは驚き)、今は誰なんだろう?やはり毎回武道館10公演ぐらい平気でやってしまうEric Claptonだろうか。